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周易伝
『昔者(むかし)聖人の易を作るや、神明を幽賛して蓍(し)を生ず。
天を参にし地を両にして数を倚(た)つ。
変を陰陽に観て卦を立て、剛柔を発揮して爻(こう)を生じ、道徳に
和順して義を理(おさめ)、理を窮め性を尽くしてもって命に至る。
仰ぎ以(も)って天文を観、俯して以って地理を察す、
この故(ゆえ)に幽明の故(こと)を知る。
始めを原(たず)ね終わりに反(かえ)る、故に死生の説を知る。
精気は物を為し、遊魂は変を為す、この故に鬼神の情状を知る。』
この「学習部屋」の冒頭文としたのは、古代中国の基本的経典の一つ
として数えられる「易経」(周の時代に大成されたので、周易とされる。)
の一部抜粋です。
初めて易に触れた頃、よく口にしていた辞伝文で、初心に帰れるような
、気に入っている文です。いつも新鮮な気持ちで勉強を続けられたら
いいな、と思います。
このページでは易学を。他、相学のページを増やしていきます。
まずは『周易』のお勉強。
64卦ある大成卦。普通は「乾為天」からでしょうが、趣向を変えて後ろから
してみます。という事で、「火水未済」から始めます。
★『火水未済』
周易の最後を飾る「未済」。なぜ未完を意味する卦が最後で、最後から2番目が事の完成を意味する「既済」なのか?ご存知の大極図。そこに易の思想があるように、周易の最後が未済なのもわかる気がします。終わりのない変化、未来を尊ぶ理念を踏まえて未済を考えるようにしたいですね。
周易雑卦伝に「男の窮まる」とあり、陰陽全て不正で内卦主爻の坎剛が外卦主爻離柔の下に在るのだから男の行き詰まり。と言うのは面白いです。地天泰とはまた違う意味になり、烈火の女性に尻敷かれた気弱な男性がのたうっているイメージでしょうか。未済の別な一面ですね。
「未済は、亨る。小狐ほとんど済らんとして、その尾を濡らす。利ろしきところなし。」
周易の彖(たん)辞はイメージに満ちています。未済を小狐に例えるのはホントにぴったりですね。未済…未だ済んでいない。まだ整わない。完成までの力が足りない。そんなイメージを経験不足であり、体力、知力に乏しく、思慮分別に欠ける小狐としてます。小狐は河を渉ろうとしますが、尻尾が濡れて重くなり、渉れないどころかとても危険です。「よろしきところなし」です。でも「亨る」です。なぜとおるのか…。小狐ですから、大きく深い河は渉れませんが、浅く小幅な小川くらいなら大丈夫。あるいは、もう少し大人になるまで我慢して、経験を積んでからなら渉れる、亨る、という事なんですね。占断のイメージを膨らませてくれますね。
★『水火既済』
卦辞(彖辞)
既済は、亨ること小なり。貞に利ろし。はじめは吉にして終わりは乱る。
内卦離火の炎上に対し外卦坎水は下り、水火の気が交わるところにも既済の象があります。
また、全爻定位で中・正・応・比、全てが正しく整っているという、64卦中、唯一の卦ですから、適材適所に配置され、不備欠陥はなく、目的・希望が達成されている状態を表していますよね。
ここで疑問なのが、こんなにも完璧で易卦の見本・模範のような卦なのに、なぜ亨るのは「小」なのか、なぜ終わりは「乱る」のかと。
「亨ること小なり」とは・・・既済の考え方としては、
「やるべき事はやっちゃったからなー、あとは残務処理くらいかぁ。これからまた大きな事をやる余力も無いしね。」というイメージが沸いてきますね。
これからまた一から始めたり、派手なことを狙うよりも、手堅く現状維持がよろしい、が「貞によろし」なんですね。
何かやるとしてもエネルギーはもはや「余力」程度ですから、それに見合った事なら出来ますよ。が、「小」の意図するところでしょうね。
そして、「乱る」とは?
彖伝に「其の道窮まるなり」とあります。
それは既済という完成は、長い目で見ると次の新しい完成の未完成であるとも言え、その序曲と考えられます。
「満つれば欠ける」「陽極まれば陰となる」であって、世の常、自然の在りかたを教示していますよね。
つまり時間とともに物事が不安定になっていく、予想外の方向に進んでしまう、そんなイメージが起こります。
それが、道の窮まり、であり、乱る、です。それはまた、象意のイメージを内包していますよね。やはり時間とともに内卦離火の盛運期から外卦坎水の悩み・障害といった、いわゆる坎難の衰運期に向かっている事への警鐘なんですね。それに予め備えておけば大丈夫!と言ってくれてる卦でもあるようですね。
この「既済」と前出の「未済」は正に表裏一体なんだなと、改めて感じますね。
ちなみに、小成卦の人物像はとても頻度が多く出てきますよね。目に飛び込んでくる印象を拾うにはしっかりと覚えておく必要がありそうです。代表とする人物は・・・
乾「父」、兌「少女」、離「中女」、震「長男」
巽「長女」、坎「中男」、艮「少男」、坤「母」
人物像はイメージを膨らませるのがコツだろうと思います。例えば
「未済」
恋人同士、あるいは夫婦が背き離れている様子、など。
「既済」
既婚の象、あるいは別れたくても成立できない、などでしょうか。
象意は大切ですね。
次は『雷山小過』ですね。
学習部屋